イガイ、ムール貝、カラス貝、パーナ貝にまつわる固有名詞はたくさんあります。 イガイ、ムラサキイガイ、ミドリイガイ、ヨーロッパイガイ、カワヒバリガイ、ムール貝、パーナ貝、、。 どれが同じ種なのか、違いや特徴、採取時期について紹介します。
目次
【在来生物】イガイ
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長さ | 12〜15cm程度 |
原産 | 東アジア沿岸 |
採取時期 | 6月〜9月 |
大型の二枚貝。黒〜黒褐色で弱い光沢のある殻を持ちます。 次に紹介する外来種のムラサキイガイに似ていますが、こちらは日本在来種のイガイ。 在来種のイガイと外来種のムラサキイガイの見分けは、イガイの方が大型で殻が分厚く、ムラサキイガイは黒紫色の殻ですが、イガイは紫がかっていない黒色である点です。 また、イガイの殻頂は尖っていてやや曲がっています。 ムラサキイガイの導入によって、食材としては稀な存在となったが、ひと昔前は、市場に並んでいたそうです。
【外来生物】ムラサキイガイ(ムール貝)
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長さ | 6〜10cm程度 |
原産 | ヨーロッパ、特に地中海沿岸 |
採取時期 | 6月〜9月 |
フランス料理やイタリア料理で使われる「ムール貝」。 和名では、ムラサキイガイといいます。 暗紫色の二枚貝で、全国の防波堤などにびっしりと付着している、似た種の貝の中で最も目にする機会の多いものです。 港湾、漁業施設、船舶、発電所など埋め尽くしてしまうほどに被害が広がっていて、マガキ、イワフジツボなどの在来生物と固着空間を争い排除したと考えられています。 あの美味しいムール貝が、そこら中に付着しているムラサキイガイだなんてちょっと意外です、イガイだけに(笑) 採取時期は6月〜9月と記載しましたが、場所によって異なるようです。 食用としての旬は、栄養を蓄えた夏〜秋が良いようです。 ただし、貝毒のリスクも考えられるため、むやみに採取して食べない方が賢明です。 カラスのような色をしていることから「カラス貝」と呼ばれることもありますが、在来種である後述の「カラスガイ」とは別種です。 釣り場によっては、「カラスガイの採取は禁止です」と書かれた看板が立っていることがありますが、これはカラスガイではないので堂々と採っても問題ありません。 1929年代に神戸港で発見され、日本全国に生息域を広げました。 バラスト水によって、イガイ類の浮遊幼生が拡散したものと推測されています。
【外来生物】ヨーロッパイガイ(ムール貝)
出典: Wikipedia
長さ | 7cm程度 |
原産 | フランス西岸、イギリス、フランス、北ドイツ、アメリカ大陸東岸 |
フランス西岸、イギリス、フランス、北ドイツ、アメリカ大陸東に分布するムラサキイガイよりもやや小型のイガイです。 日本には生息していないとされています。 ただし、バラスト水によって運ばれて定着する可能性が考えられるため注意が必要であると思われます。 ムラサキイガイ同様に、こちらもムール貝と呼ぼれ、食材として使われます。 日本でムール貝と呼ばれるものは、ムラサキイガイとヨーロッパイガイの2種なんですね。 日本ではムラサキイガイが一般的であり、ヨーロッパイガイは希少で高価です。
【在来生物】キタノムラサキイガイ
出典: 鳥羽水族館オンラインショップ
長さ | 9〜37cm程度 |
原産 | 北海道沿岸〜千島列島、北大西洋北部、ロシアの白海〜バルト海、アメリカ西岸など |
採取時期 | 3~10月※定かではありません |
主に北海道沿岸〜千島列島に分布する、在来生物の「キタノムラサキイガイ」は、外来生物のムラサキイガイとは別種です。 キタノムラサキイガイは、殻がやや細いのが特徴。 また、ムラサキイガイの殻内面は、周縁部の黒色部分がが、真珠層を完全に囲わず途切れているのに対して、 キタノムラサキイガイの黒い周縁部は、真珠層を完全に取り囲んでいます。
【外来生物】ミドリイガイ・パーナ貝
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長さ | 6〜10cm程度 |
原産 | インド洋、西大西洋、ペルシャ湾 |
採取時期 | 6月〜9月 |
ムール貝同様に、料理で知られている「パーナ貝」 ミドリイガイと同義であり、「マッセル貝」と呼ばれてることもあるようです。 1967年に兵庫県で確認され、現在では、千葉県〜鹿児島までの太平洋側広範囲と、日本海側に分布しています。侵入経路は、ムラサキイガイ同様にバラスト水であると考えられています。 先述のムラサキイガイの近縁種で、ムラサキイガイは全面暗紫色なのに対して、こちらは外側が美しい緑青色のものが多いです。 熱帯性で通常の環境下では越冬できませんが、工場からの温排水の影響などによって日本でも生息できているようです。 クロダイ(チヌ)釣り師の間で「ミドリ」と呼ばれているもので、通常のムラサキイガイよりも釣果が高いと言われています。 ミドリイガイ属にはミドリイガイの他に、ペルナイガイとモエギイガイという2種があり、バラスト水による導入が警戒されています。
【在来生物】カラスガイ
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長さ | 15〜35cm程度 |
原産 | 北海道、本州、九州、アジア大陸北部 |
現在は生息数が少ない、日本在来種のカラスガイ。 ムラサキイガイのことを「カラス貝」と呼ぶことがあるため、混同されることがありますが、イガイと比較すると、形状も大きさも異なるため、見分けは容易です。 むしろ、その見た目から、ドブガイと誤認されやすいようです。 河川の下流域、用水路など、流れの緩やかで水質が良い砂地や泥底に生息し、卵ではなく幼生を産み出す貝として知られています。 古くから琵琶湖や霞ヶ浦で食用とされてきましたが、臭みがあり、特に大きいものはおいしくないそうです。
【外来種】カワヒバリガイ・コウロエンカワヒバリガイ
出典: 爆釣丸
長さ | 3cm程度 |
原産 | オーストラリア、ニュージーランド |
採取時期 | 6〜9月 |
ムラサキイガイの小さいものと混同されやすい、釣り人の間で「ミジ」と呼ばれている小さめの貝です。 カワヒバリガイは淡水域、コウロエンカワヒバリガイは汽水域に生息します。 また、カワヒバリガイ、コウロエンカワヒバリガイと同様に小さめのイガイに酷似した貝に、「イガイダマシ」という貝があります。 カワヒバリガイ、コウロエンカワヒバリガイ、イガイダマシの3種の小さめの貝について、次の記事に詳しくまとめました。
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